完璧に機能することよりも、完璧だと信頼され続けることの方が重要

デザイン

Web制作に向きあうときの基本的な考えかたとして「変わっていくもの」というキーワードがあります。ウェブはいつでもなんどでも変更できるメディアなので、ある特定の状況下においてのベストなデザインやベストな仕様は存在しますが、これ以上触らなくても良いという完璧な状態はなかなか存在しません。いつか必ずまた手を加えたくなるものです。そうして少しずつ手を加えて、Webサイトを育てていきます。

不完全な状態を受け入れる

ウェブは更新されて使われていくものです。あたらしい情報が加えられて常にうつり変わっていきます。技術的な進歩に合わせて、裏側の仕組みもアップデートしていかなければなりません。工数や納期、もしくは技術的な制約によって、つくりたいものがあっても、いまそのときに作れないことがあります。

なので、完璧よりもベストを目指して取り組むほうが、このメディアとのちょうど良い付き合い方になると思っています。1度の完璧よりもたくさんの小さなベストの積み重ねで育てていく。ちょうど人が成長する様に似ていると思います。

ウェブは小さくてシンプルなサイトも、大きくて複雑なサイトも、同じ技術でつくられています。その大小がデザインのクオリティと比例することはありません。小さいサイトも大きいサイトも等しくクオリティの高いデザインが可能です。その逆もしかりです。

だから、完璧なものにならないとリリースができない、あれもこれも作ってからじゃないと気が済まないという考え方ではなく、とりあえずこれでいいのだ、あとから付け加えればよい、という楽観的な考え方もどこかで必要になってきます。不完全な状態を受け入れてみましょう。

機能は足りなくてもいい

これは別の言葉で言いかえると、機能は足りなくても良いが、それが正しく動作することは保障すべき、ということになります。

例えば、ここにとあるブログ記事投稿機能をつくっている開発現場があると仮定してみましょう。この投稿機能の完璧な姿とはなんなのでしょうか。おそらく考えだしたらキリがないと思います。

貼り付け機能、予約投稿機能、メモ機能、共有範囲機能、非公開プレビュー機能——。ニッチな機能はいくらでも思いつきます。でもそのぜんぶを用意しなければリリースできないんだ、と言っていると何年経ってもリリースはできません。それに本当に求められている機能なのかどうかもわかりません。

また、どんなに機能が足りなくても正しく動作しなければ意味がありません。入力フォームと投稿ボタンだけのシンプルな投稿画面があったとして、投稿ボタンを押したが消えてしまったとか、キーをタイプしても入力ができないといったシステムでは問題です。

だから、最小限の機能で正しく動作する状態を確認したらまずリリースしてしまいましょう。リリースの規模に関わらず、その後かならず手を加えたくなるので、あれもこれもと詰め込まなくて良いのです。あとから加えても遅くはないでしょう?

最低限の体験ができる機能さえ揃っていれば、それ以上の機能がなかったとしても十分に価値があります。もちろんおもてなしがちゃんとしてある方が良いに決まっていますが、どこまでもできてしまいます。機能が不足していることは決してネガティブではありません。それは単に「ない」というだけ。機能が不足しているだけで、そのシステムが「壊れている」と思われることはありません。

デザインの破綻はなくそう

その代わり、いまある機能のデザインは、システムと整合性が保たれるようにすべきです。小さくても小さいなりに破綻していないデザインが必要です。ボタンを押したが反応しなかった。これでは困ります。

システムの末端でもあるデザインの不具合が存在すると、たとえシステムが正常に動作していたとしても、ユーザーの目にはシステムが壊れているように映ってしまいます。そのデザインの不具合として例えば次のようなものが挙げられます。

  • ユーザー行動を意識できていない画面設計
  • 統一感のないデザインシステム
  • システムの動作が認知困難なビジュアル表現

なので、デザインの細部へのこだわりにも価値があります。ちょっとした気の緩みは信用を失うことにつながりかねないので、十分に時間をかけて、システムが正しく動作していると見えるデザインをつくる必要があります。Webサイトは小さくなってもいいので、その中でのベストを目指しましょう。

ブランドへの信頼

移り変わりが日常的なWebサイトにおいては、そのどの変化に対しても安定したデザインを提供し続けることが求められます。これは機能的にもビジュアル的にもです。

そうして、それを維持し続けることは、ユーザーにとってのシステムの信頼に、ひいてはそのWebサイトやそれが提供するサービスの信頼につながると考えます。情報や機能を無理に詰め込んで壊れているWebサイトよりも、想像したとおりに動作する、わかりやすいWebサイトの方が好感が持てるものです。

できるところから少しずつ育てていく。そして絶え間なくベストを維持し続ける。こうして割れ窓を許さないデザインは、将来にわたってこれが維持され続けるだろうという期待にもつながっていきます。システムの信頼はブランドの信頼へ。私たちデザイナーはその一翼を担っています。

この記事を書いた人

村田 智 @murata_s
アートディレクター/デザイナー
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デザイン
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  • デザインの考え方
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