複数人でひとつのプロダクトをデザインしているなら、お互いにデザインの成果物をレビューしあうことが日常だと思います。僕がレビューする側になったときに、よく確認しているポイントを挙げてみました。
この記事のプロダクトという言葉は、Webサービスやアプリといった使用をともなうデジタル製品を指しています。
複数人でひとつのプロダクトをデザインしているなら、お互いにデザインの成果物をレビューしあうことが日常だと思います。僕がレビューする側になったときに、よく確認しているポイントを挙げてみました。
この記事のプロダクトという言葉は、Webサービスやアプリといった使用をともなうデジタル製品を指しています。
プロダクトには必ずそれをつかうユーザーがいます。
例えば小説投稿サイトなら読者と作者がいちばん最初に思いつくユーザー像です。読者とひとくちに言っても、ヘビーに使っていて新しい作品を探している読者もいれば、普段はあまり読まないけれど、今日たまたま読んでいるだけ、というライトな読者もいます。
ユーザーを常に意識することで、自分がユーザーの分身なのだ、という錯覚・誤解から抜け出すことができます。もしデザインをしている自分が、そのプロダクトのユーザーであっても、開発に携わっている以上、真のユーザーにはなることはできません。真のユーザーになるにしてはいろいろと知りすぎています。
大きなくくりでもいいので、どんなユーザーがどんな状況でつかっているのかを把握します。
次にそのユーザーのことをすこし深く考えてみます。ユーザーはどんな目的を持ってプロダクト(あるいは機能)をつかうのでしょうか。このプロダクトをつかうことで何を達成したいのでしょうか。
デザインをするときに、単に「読者向けにデザインした」だけではアイデアもぼんやりしがちです。そのデザインが本当にふさわしいデザインかどうかを判断する材料としては、もうすこし解像度が高いユーザーをイメージできていたほうが良さそうです。
まだ人々には知られていないけれど自分が面白いと思える作品を発掘しようと思っている読者かもしれませんし、自分と同じような傾向の作品を好む読者仲間を探している読者かもしれません。
デザインのトーンにもいろいろあります。トレンドは日夜移り変わり、あっと驚くようなデザインもたくさん生まれています。新しいデザインはお洒落ですぐに取り入れたくなりますが、それはほんとうにそのプロダクトの思想にマッチしたものなのでしょうか。
テキパキ動くことを良しとしているプロダクトにアニメーション付きのインタラクションは相応しくないかもしれません。本を題材とするプロダクトでガラスエフェクトはマッチしないかもしれません。
既存のプロダクトであれば、その規模やデザインシステムの成熟具合にもよりますが、多かれ少なかれ統一した雰囲気でデザインされていると思います。新しく作っているデザインが、それとおなじ雰囲気を帯びているか、既存のイメージを壊していないかを確認します。
情報のプライオリティのつけかたやグルーピングの仕方にも個性がでます。画面内の設計やサイト内での役割は適切かどうか。ビジュアル以外の点でも確認しています。
たったひとつのデザインですべてのユーザーがこれは最高だと満足できるデザインをつくれたら良いのですが、それを実現するのはほとんどの場合で難しい、という現実があります。だれかが喜べば、別のだれかは不満を抱くものです。
できるだけたくさんの人に喜んでもらいたい、楽しんでもらいたいという想いは誰もが持っているものだと思います。特別な制約や意図がなければだれもが満足できるバランスをみつけて、そこに向かってデザインを考えてみます。
しかし、それでは企画が丸くなってしまうとか、ユーザーのヘイトが溜まってしまうとか、情報が複雑になるとか、使い勝手が悪くなるということもあります。まったく異なる性質のユーザーが同居しているのなら、両立は難しいと考えて、2つのデザインをつくるのがいいかもしれません。
デザインにとって新しさや面白さはそれを語るにははずせない要素です。もちろん、すべてのデザインに常にこれらが必要だとは思いませんが、機会があれば積極的に挑戦したい類のものでしょう。
これまでにない方法で、プロダクトの課題を鮮やかに達成したときの高揚感は、他に変えられない喜びがあります。それはデザインをするデザイナーにとってもそうですが、そのアイデアに触れるユーザーにとっても驚きや新鮮さをもたらします。
いつも煩雑だったワークフローが簡単に行えるようになったとか、複雑な情報がひと目で理解できるようになったとか、そういった驚きは、得てして、デザインの新しさとして、すぐ近くに潜んでいると思います。
未来がどうなっているかなんて誰にも分からないのですが、開発を続けるプロダクトが時間と共に変わっていくことは分かっています。10年後の姿は想像が難しいです。ですが、1年後、2年後くらいなら、こんな方向に進むかなあなんてぼんやりと想像ができたりしますよね。
目の前の石を積むようなデザインばかりしていると、プロダクト全体の整合性が徐々に取れなくなってきたりします。すこし先の未来のイメージがあるのなら、そのアイデアをいまつくっているデザインに投影してみます。
すこし遠くに旗を立てて、そこまでの道筋の途中をつくるような感覚です。そうすると、いまつくっているデザインの必然性がより確かめられるようになります。手戻りも少なくなると思います。