必要な情報を必要なときに提供すると体験が良くなる

タイトルの内容について。人と人とが会話する時には当たり前ですが、これと同じような体験をWebサイトで提供するのは簡単ではありません。Webサイトには様々な目的を持った人が訪れて、それぞれの人が求めている情報はそれぞれ違うからです。それをひとつのWebサイトでかなえようとしているのだから無理もありません。

Webサイトをつくる側は、どのような人が訪れるのか、そしてどんな情報を必要としているのかを理解してから制作に取りかかるのが普通なので、情報の不足という点で困ることは基本的にないと思います。

ただ、様々なユーザーを想定すればするほど、Webサイトに掲載したい情報は増えていくのが常でしょう。訪れた人がそのとき必要としない情報も掲載することになるので、人によっては、大量の情報に圧倒されて、自分がほしい情報がどこにあるのか分からないという状況に陥ってしまうことがありえます。

なので、情報を適切にまとめてWebサイトの構造やナビゲーションなどを工夫して、わかりやすく情報を整理できるスキルがWebサイト制作者には求められています。

必要なときに必要な情報を提供する

Webはインタラクティブなメディアなので、すべての情報を常に静的に提供する必要はありません。情報は動的に変わって良いのです。つまり、ユーザーが必要としているときに、必要な情報が届けば十分ということです。

例えば、商品を購入した人が知れれば良い情報は、購入前の人に伝えなくていいでしょう。小説を読む前の人にネタバレありの感想ページへ誘導してもあまり喜ばれないと思います。不要な情報は隠しておいて良いのです。

必要な情報を厳選して出しておく。そして、必要な人により詳しい情報を提供する。このような仕掛けを取り入れることで、次のようなメリットが得られます。

  • 情報量が絞られることで、Webサイトのモデルを理解しやすくなり、必要な情報にたどり着きやすくなる
  • 外的知識に頼っているにも関わらず、内的知識のような明瞭さ(スムーズな体験)を感じられる
  • 画面内の見た目上の情報量が減ることで、疲れない明快なデザインを作成できる

見る側としては当たり前のように扱っているインターフェースも、それをつくる側になると扱いが難しくなるものです。それもそのはずで、情報を整理する方法は無数にあるからです。目の前の情報をどのように整理するのが適切なのか。典型的なパターンを知っておくと、それを見極めるのに役立ちます。

インタラクションデザインのアイデア

ということで、いくつかの典型的なパターンをみていきましょう。インタラクションはデザインのコンテキストに影響されやすいので、網羅的な類型化は難しいですが、分かりやすいものをいくつか選んでみました。

畳んでおく

最初は情報を折り畳んでおいて、見出しのような重要な箇所だけを見れるようにしておきます。もっと詳しく知りたいというユーザーには、それをタップしてもらうことで追加の情報を提供します。

特定の行動をトリガーにして出す

典型的なユーザーの連続的な行動を把握して、どの行動でどんな情報を必要とするかをあらかじめ定義しておきます。ユーザーの行動の進行具合に応じて、つぎに必要な情報を提供します。

ユーザーの属性に応じて出す

アカウントの概念があるWebサイトなら、そのユーザーの過去の行動から、興味や関心がわかるでしょう。それを利用して、そのユーザーが次に必要としそうな情報を選んで提供します。

コンテンツの状態に応じて出す

情報自体にも状態があります。たとえば、試合前なのか試合後なのかで提供できる情報が変わります。状態に応じて、情報をまるっきり置き換えても良いですし、すべての状態の情報を切り替えて見れるようにしても良いでしょう。

習熟度合いに応じて出す

閲覧したページや利用した機能を元に、そのユーザーがどの程度対象の情報に習熟しているかを把握します。無理なくユーザーの習熟度を高められるような情報を選んで提供します。

ユーザーに必要な情報を迷うことなく受け取ってもらうために、デザインができることは、いつ誰にどんな情報を届ければ良いのかを緻密に考えることです。そして、それに最適なインタラクションを選択することです。Webは一方通行の静的なメディアではないので、その特性を存分に活かしたデザインをしたいものです。