銭湯の入り方

見る 触る 考える 動く 味わう

訪湯

定休日を確認する 路地に入る 地面の段差を気にする 暖簾が掛かっていることを確認する 明かりが付いているか確認する 自転車の駐車台数を数える 自転車を停める場所を探す 自転車を降りる 自転車に鍵をかける 手袋をはずす 暖簾の意匠を見る 暖簾の切れ目を探す 暖簾を両手でかき分ける

到着

引き戸を左に押し開く 玄関に入る 肩に掛かった暖簾を元通りにする 引き戸を閉める 男湯の扉を確認する 靴を脱ぐ 下駄箱前に上がる 振り返ってしゃがむ 靴を揃える 靴を右手で持ち上げる 立ち上がって振り返る 空いている下駄箱を探す 鍵の部分を左手で持つ 下駄箱を開く 靴を下駄箱に入れる 下駄箱を閉める 鍵を押しながら下駄箱を押す 鍵を右上に引いて取り出す 鍵をズボンの右ポケットにしまう 鞄を手前に引き寄せる 財布の準備をする 男湯の扉の前まで移動する 引き戸を開く

番台

右足から入る 番台のお姉さんと目を合わせる 「こんばんは」という 半身で引き戸を右手で閉める 微笑みながら会釈をする 鞄から財布を取り出す 財布を左手で持つ 財布のポケットを右手で開ける 400円を探す 500円硬貨を握る 硬貨をトレーの上に置く 「これで」という お釣りを受け取る準備をする お釣りを右手で受け取る お姉さんの手が触れる 会釈をする 暖簾の切れ目を探す 暖簾を押し分ける

脱衣

脱衣所の間取りを把握する 脱衣所内のお客さんの人数を数える お客さんの年齢を探る お客さんの性格を感じ取る 常連具合を感じ取る 間取りを調べる お手洗いを探す お手洗いに行く ロッカーの場所を探す 空いているロッカーを探す ロッカーを手前に開ける 中を覗く 空であることを確認する 振り返る 籠を探す 籠に近づく 籠を手に取る 籠を置く 服を脱ぐ 服を脱ぎながら浴室内の様子を窺う 脱いだ服を籠に入れる 石鹸とタオルを鞄から取り出す 石鹸とタオルを抱える 籠を持ち上げる 籠をロッカーまで運ぶ 籠を空いているロッカーに入れる 扉を閉める ロッカーの鍵をかける 鍵を抜き取る 鍵を手首につける 忘れ物を確認する 浴室に向かう 浴室に入る

入浴

浴室の扉を閉める 空いているカランを探す 桶と椅子を探す 桶と椅子を取りに行く 桶と椅子を一つずつ持つ 空いているカランまで行く 桶と椅子を置く 椅子に座る 熱湯と冷水を混ぜながら桶に注ぐ 髪を洗う 身体を洗う 使った場所を整える タオルと石鹸は置いておく

電気風呂

電気風呂の前に行く 桶を探す 桶の前でしゃがむ 桶を持つ お湯を汲む 掛かり湯をする 桶を置く お湯に指先で触れてみる 湯加減を調べる 電気の具合を調べる1 入るかどうかを決める 慎重に入る 足に流れる電流を確認する このまま全身入るかを決める 壁を支えにして慎重に浸かる 歩いて湯船の真ん中に移動する 振動を愉しむ 肩まで浸かる 急いで出る

薬草風呂

薬草風呂の前まで移動する 薬草に染まったお湯を見る 湯加減を調べる 入って壁際まで行く 振り返りながら座る 気泡が皮膚を押す感触2 ぬるめの温度を感じる 薬草の袋を触ってみる 隣の湯船の状況を窺う

浅風呂

隣の浅風呂へ移動する 滝の場所を頭に入れる 具合の良い所を探す 腰を下ろす 気泡の余韻を感じる 滝の音に耳を澄ます3 滝の跳ね返りを拭う 滝を触る 浴室の様子を窺う

ジャグジー風呂

横のジャグジー風呂に移動する 吹き出し口まで移動する 吹き出し口に背中を近づける 全身の力を抜く 背中のあらゆる部分に泡を当てる4 少し離れる 再び近づく 向いている方向を変える 足の裏を泡に当てる5

深風呂

隣の深風呂に移動する 真ん中より壁側に移動する 腰を屈めて肩まで浸かる 真っ直ぐ立つ 腰を屈めて肩まで浸かる6 真っ直ぐ立つ 深風呂を出る 深風呂の縁に腰掛けて休む カランまで移動する タオルを手に取る 簡単に身体の水分を拭き取る

サウナ

サウナ室の前まで移動する 重い扉を引く 扉にぶつからないように入る サウナ室の間取りを把握する 座る場所を探す タオルを半分敷く 座る 砂時計を逆さまにする テレビを見る 汗を感じる じっとする7 タオルを持つ 立ち上がる 扉を押す サウナ室を出る

水風呂

水風呂へ向かう 水を足元にかける 水を肩からかける 水風呂へ入る 肩まで浸かる8 水風呂から出る 深風呂をもう一度愉しむ

浴後

カランの席に座る 簡単に汗を流す タオルで全身を拭く タオルを絞る 桶に水を溜める 使った場所を流しておく 使った椅子も流す 桶と椅子を持つ 入り口横に桶と椅子を置く しっかり身体を拭く 石鹸を持つ 浴室を出る

着衣

もう一度身体を拭く 洗面台でタオルを絞る ロッカーまで移動する 手首の鍵を取り外す ロッカーの鍵穴に鍵をはめ込む 鍵を押し込む ロッカーを開く ロッカーの中から籠を取り出す 籠を持ち運ぶ 邪魔にならない場所に置く 扇風機の電源を入れる 扇風機で身体を冷やす 服を身につける ドライヤーを探す ドライヤーの傍まで行く ドライヤーで髪を乾かす

休憩

冷蔵庫のドリンクの在庫を確認する 籠から財布を取り出す 冷蔵庫に近づく 冷蔵庫から牛乳を取り出す 番台のお姉さんに「これください」という お姉さんに110円を渡す 籠まで戻る 財布を鞄に戻す 空いている椅子を探す 椅子に座る 牛乳の蓋を開ける 牛乳を飲む 瓶と蓋を捨てる

帰宅

鞄を背負う 籠を元の位置に戻す 忘れ物を確認する 出口へ向かう カーテンをくぐる 番台のお姉さんに「ありがとう」という 扉を開く 玄関に出る 扉を閉める 下駄箱の鍵を鍵穴に差し込む 靴を取り出す 靴を置いて履く 扉へ向かう 扉を開く 暖簾を別けて外に出る 扉を閉める 自転車に乗る 帰宅する

利用者M

23歳 • 男性 • 京都市左京区在住

身長177センチメートル。仕事はデスクワーク。仕事が影響しているのか、日頃から腰に僅かな疲労を感じている。Mは土曜日の夕方に、超軟水の湯が肌に心地よい銀水湯に、束の間の癒やしを求めて訪れた。

「銭湯の入り方」ポスター

銭湯の入り方のポスター

A2判のオフセット印刷で制作。詩集「ハロー風景」に挟んで販売しています。

Amazonで購入

ハロー風景について詳しく